〈foot the coacher〉や〈SPECTUSSHOECO.〉、〈AUTHENTIC SHOE & Co.〉そして今回エディションのエクスクルーシブモデルの〈FOOTSTOCK ORIGINALS®〉などを手掛ける竹ヶ原敏之介氏にインタビューをさせていただきました。ブランドを始めたきっかけや靴作りに対する思いについて話を聞くことができました。
about / FOOTSTOCK ORIGINALS®
2014年にリリースされた日本のメンズシューズブランド。
『THE STANDARD SHOES』をテーマに、〈AUTHENTIC SHOE&Co.〉や〈foot the coacher〉のデザイナー竹ヶ原敏之介氏が手掛けています。職人技術を注ぎ込んだ妥協しない素材選び、縫製の品質に対するこだわりから、世界に誇る履き心地とデザインを実現しています。
ドアの取手やシーリングライトなど、世界各国から取り寄せたパーツを散りばめたこだわりの詰まった空間。
ミニマルで整然としている室内は、街並みとは一線を画した雰囲気を醸していました。
そんな中、ゆったりとした雰囲気でインタビューを伺うことができました。
―まず、どんなことがきっかけでブランド(靴を作ること)を始めたのでしょうか。
以前、インタビューの記事で学生の頃から靴に興味があったと拝見したのですが、そのルーツなどあれば教えてください。
竹ヶ原: 80年代後半から90年代初頭の頃は、僕の地元には今ほどおしゃれなお店がなかったんですよね。
そんな中でなんとか街の靴屋や洋服屋さんで良さそうなものを見つけて、自分なりに試行錯誤していました。
その頃からファッションに対して人一倍興味があったのかもしれないですね…。
当時、初めて買った革靴は〈Dr.Martens〉の8ホールでした。
その後〈Tricker’s〉を買ったのかな。初めて買った靴はいつまでも覚えているものですね。
とにかくイギリス靴が好きでした。
そこから靴に興味を持って服より靴にお金をかけるようになっていったことが、今の靴作りに繋がっているのかもしれないですね。
その後、東京に出て靴作りを始めたんです。
―その頃から靴を作り出したんですね。
最初は三日三晩寝ないで靴作りをし、そのまま靴を履いて寝たという逸話を伺いました。
竹ヶ原:そうそう。
履いて寝ましたね。
初めて靴を作ったときは可愛くて誰でもそんな気持ちになると思うんですよね。
当時イアン・リードやボードウィン・マッソンなどのプリミティブな靴を見て格好良いなと思っていたんですけど、その時の僕には手が出る値段じゃなかった。
欲しいけど、買えないから作ろうと考えたんです。
それが靴を作ることになった明確なきっかけですね。
―20代前半の頃に展示会を開いたと伺いました。
竹ヶ原:その頃、昔からの友人であった洋服デザイナーの〈suzuki takayuki〉と一緒に展示会をやりました。
そこでそれまでに作った靴数十点に加え、尊敬するアーチストの方に僕の作った靴を履いてもらい、その経年変化をインスタレーションとして表現したんです。
そこから段々ミュージシャンの方やアパレルブランドなど、各方面よりオファーをいただけるようになっていきました。
―そういった変遷を辿ってトリッカーズでお仕事をされたのでしょうか。
日本ブランドとイギリスブランドでの工程や考え方に大きな違いはあったのでしょうか。
竹ヶ原:そうですね。
創業から200年近く受継がれている伝統的な技法に直接触れられた経験は、今思っても貴重なものでしたね。
日本だともっと効率化されていて、工程自体は似たような感じですけどディテールはまるで違う。それが良い悪いではなく。
それゆえに日本では繊細な物作りができるのはメリットかも知れませんが、佇まいや空気感は違ってきますよね。
―靴作りにおいてこだわっているポイントなど教えてください。
竹ヶ原:履き心地とデザイン性ですね。
それに尽きると思います。
僕個人としてはジャンルに囚われず、極端にデザインに振っているものや履きにくくても個性の強いものが好きですが、自分が作る靴は履きやすさとデザインのバランスが取れた靴を意識して作っています。
見た目はシンプルであまり手がかかってなさそうなものでも、履き心地のために見えない部分で凄く手がかかっているとか、あまりひけらかさない物作りが好きです。
あとは自分がその靴を作る意味というのを常に考えながらデザインしています。
俯瞰で見ながら取り組むことで、ルーティンに溺れる事なく色んな創作やアプローチが繋がりをなしていく気がするんですよね。
だから場当たり的な意味のないものは作りたくない。単純に利益の為だけに作られたものは表情が死んでいる。むしろ世の中にはそういった物作りで溢れていて、どうしたらそういう状況を打破出来るかとか考えてしまう。
僕は自分が作った靴を多くの人たちに履いて欲しいとはあまり思わない。もう少しパーソナルに、把握できる範囲のなかで納得がいく靴を作りたい。うまく言えませんが漠然とした大多数より、価値を共有できる一部の人の為に力を注ぎたいという感じでしょうか。
あとは古いものも新しいものも知ったうえで、その中での真の価値、流行の先を読むのではなく、どこにCORE(核心)があるのかを突き詰めていくこと、さらにそれがどの時代においても反骨的なポジションにあるということが一番の理想ですね。
―今回、エディションの別注シューズを作っていただいたのですが、どういった経緯で、どういったイメージで作られたのでしょうか。
竹ヶ原:ミリタリーの粗野な部分とエレガント、相反する要素をいかに上手くまとめるか色々考えました。
そのなかで軍服やユニフォームのようなアプローチでいこうと思いました。
普段履くカジュアルなものではあるけど、上品で、丈夫さであったり履き心地の良さも見た目で分かるようなものにしたいと考えました。
素材の面では、革からオリジナルで作り、ソールもコンセプトに合わせてクッション材を内部に仕込み、ゴムの配合をさらにグリップ力の高い仕様に変更しました。
デザイン的にはドレスをベースに、ミリタリー感はどことなく感じるくらいに留め、左足だけに入ったナンバリングは、ミリタリーブーツに見られる個別番号を模して、さりげないボリュームで打刻しました。


















―1番愛着があるのはどのモデルでしょうか?
竹ヶ原:このローファーですね。
スタイリングを考えると一番キワモノなので。この手のアッパーデザインに無骨なソールが付いたものはあまり見かけませんし。
カラーリングでいえば、型押しとスムースレザーのコンビネーションが重厚な雰囲気でおすすめですね。
素材は、国産の牛革です。
革は基本オリジナルのものを作っています。
―どんな人にどんな着こなしで履いて欲しいですか?
竹ヶ原:こちらがどうこういうものではないとは思いますが、主張を持ったひとに履いて欲しいですね。
うちではオリジナルソールでの張り替えなど、できる限りのリペアにも対応していますので、永く履いていただけると嬉しいです。
―エディションはどう見えていますか?
竹ヶ原:大人の遊び心を提案している印象です。
それこそ主張を感じる良いお店だと思います。セレクトされてるアイテムが個性的で、毎シーズンどういった内容か楽しみにしてます。
今回もデザイナー竹ヶ原氏のルーツを知り、細部への拘りや職人としての価値という部分まで伺うことができました。
自分のアイデンティティは保ちつつ、履き手をリスペクトする姿勢だからこそ良いプロダクトが出来上がるのだなと感じることができました。
また、記事としては書けない貴重な話も聞くことができました。
早速別注のシューズに足を入れてみたい。そんな気持ちになるインタビューでした。